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向井了一社会保険労務士事務所

10月からの社会保険の適用拡大に向け、事務取扱いの通達や50のQ&Aが公開されました。


厚生労働省より、2022年10月からの社会保険の適用拡大に関する事務の取扱い通達や50のQ&Aが公開されました。今回は、通達やQ&Aより、社会保険の適用拡大に関するポイントをご説明いたします。

 

社会保険の適用拡大とは

社会保険の加入者は法令で定められています。フルタイムの従業員(正社員など)と、フルタイムの従業員とを比べて週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が3/4以上のパート・アルバイトなどです。一般被保険者といいます。 社会保険の適用拡大とは、社会保険に加入する対象範囲が企業の従業員数によって段階的に拡大することです。対象となる企業は「特定適用事業所」といいます。 現在、特定適用事業所は、従業員数500人を超える企業が対象となっています。 また、特定適用事業所の従業員のうち、一般被保険者にならない短時間労働者で以下の4つの要件を満たす方が社会保険に加入することになります。 【短時間労働者の社会保険の加入要件】 1 週の所定労働時間が20時間以上 2 月額賃金が88,000円以上 3 雇用契約期間が継続して1年以上見込みがある 4 学生ではない(休学中または夜学生は除く)

なぜ社会保険の適用拡大を進める必要があるのか

これまでも法律改正により、短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大の取組が進められてきました。その意義については、以下の点があるとされています。


(出典)厚生労働省『被用者保険の適用拡大を進めるにあたっての基本的な考え方』 2022年10月以降、社会保険の適用拡大が次のように変わります。 2022年10月1日以降、特定適用事業所の企業の人数要件と短時間労働者の4つの加入要件のうち、雇用契約期間の要件が変わります。 【特定適用事業所の企業の人数要件】 現 在:従業員数500人を超える企業 改正後:従業員数100人を超える企業 2022年10月1日以降は、従業員数100人を超える企業が「特定適用事業所」となります。 【雇用契約期間の要件】 現 在:雇用契約期間が継続して1年以上見込みがあること 改正後:「雇用契約期間が継続して1年以上見込みがあること」が廃止、     2か月を超える雇用の見込みがあること 以下の特定適用事業所の企業の人数要件に該当し、短時間労働者の加入要件に該当するときは、社会保険に加入することになります。 【加入要件】


従業員数100人を超える企業とは 従業員数100人を超える企業とは、厚生年金の被保険者の総数が100人を超えることが見込まれる状態をいいます。2022年10月からの社会保険の適用拡大に関するQ&Aでは、以下のように回答されています。 ~Q&A 問8より~ Q: 「被保険者の総数が常時100人を超える」とは、どのような状態を指すのか。どの時点で常時100人を超えると判断することになるのか。 A:「被保険者の総数が常時100人を超える」とは、 ①法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上100人を超えることが見込まれる場合を指します。 ②個人事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上100人を超えることが見込まれる場合を指します。 従業員数100人超えに該当する企業と該当する可能性のある企業は、2022年8月頃、日本年金機構からお知らせが届きます。以下を参考に送付されるタイミングと必要な手続をご確認ください。 【2022年10月より前に届くお知らせ】


【2022年10月以降に届くお知らせ】


(出典)厚生労働省『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和4年10月施行分)』 パート・アルバイトの所定労働時間が変更になったときの取扱い 特定適用事業所におけるパート・アルバイトの所定労働時間が変更になったときは、その状況に応じて社会保険資格取得届の届出または被保険者区分変更届の届出を日本年金機構に行う必要があります。 (例)所定労働時間が20時間未満の従業員が20時間以上(短時間労働者)になった場合  →社会保険資格取得届の届出 (例)所定労働時間が20時間の従業員が30時間(一般被保険者)になった場合  →被保険者区分変更届の届出:「短時間」→「一般」に区分を変更 (例)所定労働時間が30時間の従業員が20時間(短時間労働者)になった場合  →被保険者区分変更届の届出:「一般」→「短時間」に区分を変更 参考・ダウンロード|健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届 参考・ダウンロード|被保険者区分変更届・70歳以上被用者区分変更届 その他、2022年10月からの社会保険の適用拡大に関するQ&Aでは、以下のような取扱いについても回答をしています。 ~Q&A 問32より~ Q: 就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週20時間未満である者が、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合は、どのように取り扱うのか。 A:実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。 引用|厚生労働省『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和4年10月施行分)』 従業員数に関係なく、2か月を超える見込みのある従業員も社会保険の加入が必要 2022年10月、社会保険の適用拡大とともに、厚生年金保険の適用除外要件が見直しになります。法令等では、日々雇用される者と以下の従業員は社会保険の適用の対象とはなっていません。 改正前(2022年9月30日まで):2か月を超えて雇用されない 改正後(2022年10月1日以降):2か月を超えて雇用される見込みがない者 つまり、有期契約労働者の雇用契約書に「更新する場合がある」などの明示があるときは、2か月を超えて雇用が見込まれると判断され、最初の2か月の雇用契約期間を含めて社会保険に加入しなければならなくなります。


(出典)厚生労働省年金局『その他の制度改正事項及び業務運営改善事項について』 企業がすべきこと まずは自社が2022年10月以降の「特定適用事業所」に該当するかをご確認ください。 社会保険の適用拡大に向けては、今から準備が必要です。パート・アルバイトで対象になる方を確認のうえ、対象者には今後社会保険に加入しなければならないことを早めに説明し、働き方や勤務時間などの労働条件について話合いを進めることをおすすめします。必要に応じて雇用契約書の変更などの準備をすすめます。 社会保険の適用拡大に伴い、企業の社会保険料も増えます。どのくらい増えるかを早い段階で確認し、必要であれば、採用計画などの見直しも検討してください。 2022年10月、従業員100人を超える企業に適用拡大されたあと、2024年10月からは従業員50人を超える企業が対象となります。 現時点で30名程度の企業では、2年後には現在よりも従業員数が増えていることが想定されます。社会保険の適用拡大を意識した上でパート・アルバイトの働き方管理や採用を進めていくよう、現時点から制度について理解されることをおすすめいたします。

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