「どんな社員にいてほしくないですか?」就業規則作成で私が最初に聞く質問
- 向井了一

- 6 日前
- 読了時間: 5分

「どんな会社にしたいですか?」では話が進まない
タイトルを見て、え!?と驚かれた方がいたかもしれません。
就業規則の作成に入る前に、私は必ず経営者にヒアリングをします。
以前はこんな質問をしていました。
「どんな会社にしたいですか?」
「経営理念を教えてください」
でも、すぐに答えが返ってきた経験はほとんどありません。
しばらく考えて、「う〜ん……」と言ったまま止まってしまう社長がほとんどです。
無理もありません。
日々の経営で手一杯のなかで、理念やビジョンを言語化するのは簡単ではないからです。
私はこれまで多くの中小企業の就業規則作成に関わってきましたが、「どんな会社にしたいですか?」という質問だけで話が進んだ経験はほとんどありません。
そこで今では、こう聞くようにしています。
就業規則作成時に、必ず聞く2つの質問
① どんな社員に会社にいてほしいですか?
② どんな社員に会社にいてほしくないですか?
この2つです。
特に②を聞くと、ほとんどの社長がすぐに答えてくれます。それも、かなり具体的に。
なぜなら、経営者は必ず「困った経験」を持っているからです。
採用してみて初めてわかった。でも、そのときにはもう手遅れだった——
そんな経験が、言葉を引き出します。
そして②の答えが出てくると、自然に①も見えてきます。
「こういう人は困る」の裏側に、「こういう人に来てほしい」があるからです。
また、①を答えていく中で、こういった社員と会社を作り上げていきたい、という前向きな思考を引き出せます。
「いてほしくない社員」——実際に出てきた例
ヒアリングで出てくる話は、業種によって実にリアルです。
サービス業の場合
清潔感のない人は困る。髪がボサボサ、爪が汚い
刺青が見えていて、お客様に指摘された
介護・保育の場合
イヤリングをつけて来て、園児に引っ張られてケガしそうになった
香水がきつくて、利用者さんが気分悪くなってしまった
業種を問わず出てくる話
レジのお金が合わないことが続いて、調べたら社員が盗んでいた
備品や商品がなくなることがあった
どれも、「採用面接ではわからなかった」という共通点があります。
規程がないと、会社は何もできない
ここからが、就業規則の話の核心です。
こうしたトラブルが起きたとき、就業規則に規程がなければ会社はほとんど何もできません。
身だしなみの問題であれば、「清潔感を保ってください」と伝えることはできます。
しかし、それはあくまでお願いに近いものです。
改善されなくても、会社が指導や処分を行う根拠が弱くなってしまいます。
では、窃盗はどうでしょうか。
「さすがに窃盗なら解雇できる」と思う経営者は少なくありません。
でも、これは大きな誤解です。
窃盗は刑法上の犯罪ですから、警察に被害届を出すことはできます。
しかし、解雇は別の話です。
懲戒処分を行うには、就業規則に根拠規定があることが必要です。
規定がなければ、懲戒解雇は「権利の濫用」として無効になるリスクがあります。
結果として、こんなことが起きる可能性があります。
社員が窃盗をした
規定がないまま解雇した
社員に「不当解雇だ」と訴えられた
会社が負けた
窃盗した社員に、解雇後の賃金相当額を支払うことになった
「そんなことが起きるのか」と思われるかもしれません。
しかし、規定がなければ十分に起こり得る話です。
「うちは小さいから、難しいルールは無理」という方へ
懲戒手続きというと、「懲戒委員会」や「審査会」のような仕組みが必要だと思われるかもしれません。
でも、小規模な会社にそんな組織は必要ありません。
必要なのは手順です。
処分を下す前に、本人に言い分を聞く
社長が処分を決定する
書面で本人に伝える
これだけです。
この流れを就業規則に書いておくだけで、いざというときに会社を守る根拠になります。
大切なのは組織ではなく、プロセスを踏むこと。
そして、そのプロセスが就業規則や諸規程として存在していることです。
就業規則は「会社を守る盾」
就業規則は、労働基準監督署に届け出るための書類ではありません。
「どんな人と一緒に会社をつくりあげていきたい(働きたい)か」を言葉にして、トラブルが起きたときに会社と社員の両方を守るためのものです。
そしてその第一歩は、難しい理念の話ではなく——
「どんな社員にいてほしくないですか?」
という質問から始まります。
もし今、
「うちの会社では、どんな社員にいてほしくないだろう?」
と考えたときに、すぐ答えが浮かぶのであれば、その答えは就業規則に反映すべき内容かもしれません。
就業規則は法律のために作るものではありません。
会社の考え方や価値観を形にし、社員との共通ルールを作るためのものです。
そして、そのルールは問題が起きてから作るのではなく、問題が起きる前に準備しておくべきものです。
いてほしい社員のイメージができると、自然と会社の未来のイメージが膨らみます。
就業規則の作成のお手伝いは、このように前向きな気持ちと、未来の会社のイメージを膨らませながら進めています。
就業規則の見直しや新規規程の作成をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
この記事は、実際の経験をもとに、社会保険労務士の視点から執筆しています。





















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